台風19号と秋華賞
































異常なほど
強い勢力で上陸した台風19号


貴重な
3日間開催が中止となり
とりあえず美浦で待機


今週は
土曜日と月曜日に
それぞれ2頭ずつ
出走予定馬がいたウチの厩舎


開催日の変更で
月曜日と火曜日の出走に変わり
来週以降出走を予定している
他の管理馬たちの調整も含め
臨機応変な対応を確認


調教の段取りは済んだが
問題は台風の風雨対策

厩舎の扉は
すべて閉じ
外にある物は屋内に



扉を
全て閉じることで
厩舎内の温度や湿度が上昇するため
扇風機や換気システムで
季節外れとなる対応


万が一の
断水などにも対応すべく
バケツや飼い葉桶など
ありとあらゆる容器に水を溜め
午後の作業も早めに集合し
いつもより早く解散


厩舎で
何か問題が起きた際
急遽来ることも難しそうと
やむを得ず調教師は厩舎泊




台風上陸前
最後の見回りで厩舎へ

雨風の
音を気にしてだろうか
朝飼葉はほとんど残していたという馬は…


ちゃんと完食


少しは音に
慣れてくれたみたい



でも時々
強くガタガタという音がすると
飼葉を食べながら
ビックリしている馬が数頭



だいたい
経験が浅い2歳馬たち





ふと
思ったのだが…

ウィクトーリアが
秋華賞に出走していたら
移動手段の確保が難しく
仕方なく留守にしていたかもしれない


ということ


そうなったらこの台風
どう対処していたのだろうか






そう

ちょっと前までは
この秋の目標だった秋華賞

もう他人事のように
なってしまったレースが
明日13日(日)に京都競馬場で行われる


注目馬の1頭として
今週を迎えるはずだったウィクトーリアのこと


少しだけ
思い出して書き残します






登録抹消となったのは
10月3日(木)


最後の
レースとなってしまったローズSから
開催としては2週間が過ぎ
注目していた凱旋門賞も終了


秋華賞の記事を見て

『ああ今週だったな…』
と現実に戻される


母に
追いつけるのか


本番を
楽しみにしていただいた方達には
目標目前の引退となったこと
ただただ申し訳ないという気持ち


一方で
ウィクトーリアを初めて見た時から
肢元が課題と感じていたこともあり
繁殖として牧場に戻せた安堵感も否定できない



初めて
ウィクトーリアを
見させていただいたのは1歳の時

『うわっ』

『やっと立派な馬体の牝馬が出てきたな』
というのが第一印象

バランス的にも
好きなタイプ


姉2頭は
比較的小柄


母も
あまり大きくなかったが
ウィクトーリアは見ただけでも
ワクワクするような馬体


良い雰囲気を
持っていた長姉は
レース選択など上手な采配ができず

未勝利さえ脱出できれば
古馬になっての成長が楽しみなタイプも
華奢な馬体なりの難しさなどで
勝たせることができず
未勝利のまま引退となってしまった


大きくなることを
諦めるくらい小柄な次姉は
当初の予想を良い意味で裏切って
まだまだ今後が楽しみ


そんな2頭の姉と違い
雄大さというインパクトを持つ
新しい妹を目の前にして
期待は膨らむばかり


ただ
落ち着いて全体を見回していくうちに
難しそうな下肢部に気が付き
つい出てしまった

『ん~』

という声


『やっと気が付きましたね』

誰も
言葉にはしながったが
そんな雰囲気になったのを覚えている





そうは言っても
当時はまだ1歳

成長と共に
変化は見込めるはずだし
難しい肢元をしていながら
大きなレースを勝った馬もいる


競走馬は
やってみなければわからないと
直ぐにポジティブな考えが上回った


2018年の5月末
美浦に初入厩


まず困ったのは
飼い葉に全く口を付けなかったこと


一日毎
少しずつ口を付け始めたが
それでも遠慮気味


直ぐに
何を好んで食べていたか問い合わせ

育成時に
好んで食べていたらしい飼料を
確認して食べさせようとしたが
全く興味ないという態度

飼葉については
つくづく不思議ちゃんだった

環境に慣れ
飼葉食いも安定

食べ始めると問題も無く
成長と共に食べるようになってきたが
場所が変わると相変わらず遠慮気味なのは
最後まで変わることがなかった





7月の
函館競馬でデビュー勝ち


輸送後の熱発で
甘い仕上げとなってしまったが
それでもレコード勝ち

だいたい
スローペースになりがちな新馬戦

最内枠だったこともあり
脚を余さないよう意識し
逃げてくれた鞍上に感謝


兄に続けと
楽しみに臨んだ札幌2歳Sは
期待を裏切って7着


滞在した札幌競馬場が
ずっと悪天候で馬場が不安定

イメージ通りの強度で調教できず
新馬戦に続き甘めの仕上げ

通用してくれと
願いながら出走させたが
不安な仕上げで勝てるほど
重賞は甘くなかった


3戦目となった
赤松賞は5着

まだ
ビッシリやれる状態ではなかったが
かといって悪い仕上げでもなく
それにしては揮わない競馬


もしかして…と
4戦目の自己条件は
少し無理をしても逃げてもらう指示

楽勝した走りに
やっぱり逃げなければ
ダメなタイプだったのか…
という結論




フローラSは
あらら…というスタート


それなのに
過去と違って
差し切ることができたのは
鞍上の落ち着いた騎乗はもちろん
2戦目3戦目で控える競馬を経験していたお陰

惨敗した3戦目の後
自己条件までが3カ月

そのあと
フローラSまでは
2ヵ月間隔を空けられて
少なからず成長の手応えもあった


デビュー勝ちの後
悶々とした2回の敗戦が
結果として無駄ではなかった
というところがいかにも若馬の競馬


フローラSの後
本番のオークスに向かうのか…


肢元は
安定していたが
先のことを考えると
厩舎だけで判断するのは非常に難しく

一旦放牧に出し
状態を共有したうえで
納得の上で出走に踏み切れたことは
最善だった


着順は
残念だったが
能力は引き出すことができたオークス


最後は
運も必要だという
勝負事の基本中の基本を
引き寄せられなかったことが心残りだ


オークスの後
疲れやすかった右前肢を
ちょっと気にしていたので
秋競馬大丈夫かな…
と思いながら放牧


良い状態で
美浦に帰厩してくれた姿を見て
夏休み中に関わっていただいた皆さんと
ウィクトーリアに
ただただ感謝

あとは
上手く厩舎が引き継げるよう
飼葉食いと肢元のことを考えて栗東入り

いつもの
厩舎のパターンを踏襲し
トライアルとしては
納得の状態で出走させることができた

しかし
これまで注意していた右ではなく
反対の左前肢


最善は
尽くしたつもりも
あのウッドコースの追い切りを
一本でも坂路でやっていたら
少しは違ったのでは…とか
色んなことが頭に浮かぶ


勝負に
タラレバは禁物だが
上手くいかなかった出来事に
検証は必須




ちょっと話が変わるが
一つだけ



こうして
肢元に何かあって
有力馬が引退すると
必ず責任を擦り付けられるのが
競馬場の馬場


馬場委員を
やらせていただいていることもあり
現在の馬場の作りは
ある程度把握しているつもり

東京や中山といった
関東エリアの開催前には
定期的に関係者で馬場の説明を聞いたり
実際に歩いて確認作業もしている


出走当日も
可能な限り馬場を歩いてみたり
気になればジョッキーとも話をする



馬場が
硬くて気になる時は
馬場担当の職員さんに
ジョッキーからも話が行くし
私が知る限り
誰も硬い馬場は望んでいない





生産から
育成という過程で
著しい技術向上があり


トレセンや牧場で
ウッドチップや坂路といった
馬場の工夫


プールや
ウォータートレッドミル



騎乗者なしで
運動することができる
トレッドミルの利用など
昔に比べると難しい肢元を
我慢させる方策が増えた最近だからこそ
競走に耐えている馬達が多くなっている


ウィクトーリアも
たくさんの人たちに
支えてもらったお陰で
頑張ることができました










秋華賞前日
出馬表を見ていて

『この中にいたかったな…』とか


『台風のなか
    馬も人も移動大変だったんだろうな…』とか


時々感じる
置いて行かれた感





母親を超えてもらいたい
ということは誰もが思っていたはず


母は
GⅢとGⅠを勝利


ウィクトーリアは
GⅡを勝って
オークスは母と同じ4着


GⅠを勝てば
母を超えられたはずなのに


競走成績では
超えられなかった母を
繁殖牝馬として超えられますように





秋華賞前日


台風の被害が
最小限に抑えられるよう願い

避難されている方
被害にあわれてしまった方たちに
お見舞いを申し上げます



まだ
私たちが住む場所でも
何が起こるかわからない状態ですが

台風一過となる
明日以降

我々は
何ができるか
何をするべきか
ちゃんと考えなければいけません



そして
少しでも良いコンディションで
秋華賞が行われることを期待



全馬が力を出し切り
無事にゴールできるよう願っています







































































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この記事へのコメント

ふくたけ
2019年10月12日 23:41
小島先生

ウィクトーリアについての愛の溢れるコメント、感動しました。

私も秋華賞の週になったというのに、いつものG1のように雑誌やネットで出走馬チェックをするのが、正直、ツラかったです。でも、ウィクトーリアのそばで見守っていた先生方の方がはるかに、辛いと思います。

私は今週、ふとシルクのラウンジに行って、ウィクトーリアのフローラステークスのレイや銀杯を見たり、ビデオ観戦をしました。

悲しい気持ちではあるのですが、でも、躍動しているウィクトーリアを見ると、元気がでました。
やはり、ウィクトーリアをここまで育ててくれた小島先生、厩舎スタッフの方々、牧場スタッフの方々には感謝しかありません。
私にとっては、こんなに一戦一戦、思い出深い子は今までにいませんでした。関係者みなさまのおかげです。

願わくば、ウィクトーリアの子が、母や祖母らと同じように、ぜひ小島厩舎で、愛情を受けながら育てられ、躍動する時が来ますように。

小島先生も、厩舎泊ということでお疲れと思います、本当にいつもありがとうございます。大変な台風ですが、どうか小島厩舎の子はもちろん、全ての馬達が大事のないように祈っています。

明日の秋華賞にウィクトーリアはいませんが、かつて一緒に走ったライバル馬たちのがんばりを、全力で応援しようと思います。
カゼノコウテイ
2019年10月13日 04:10
ウィクトーリアのことをいろいろ記載して頂いて興味深く拝見させて頂きました。
久々に愛馬応援に気合が入った馬でした。
札幌、東京、阪神と勝つレースを見ることはできませんでしたが、目の前にいるスレンダーな美人、ウィクトーリアを見れたこと、一生懸命に仕上げて下さった厩舎関係者の皆様、小島調教師の熱意がこのブログを通じてさらに把握できたことでさらにウィクトーリアへの応援にも力が入りました。
秋華賞は勤務を休みにしていたのでしっかりとウィクトーリアが走っていたらと幻想を浮かべながらTV観戦したいと思います。
ウィクトーリアの子供に出資ができたら、また小島厩舎に入厩したら精一杯応援しますね!
厩舎関係者のウィクトーリアの帽子をかぶって(笑)
まささん
2019年10月13日 16:55
こんにちは。

美浦トレセンにおいては、台風の被害がほぼなかったとのこと。良かったと思います。明日からの東京開催、無事に開催出来ること。こちらも本当に良かったと思います。

ウィクトーリア。
色々と記載して頂き、興味深く拝読させて頂きました。
小島先生・厩舎関係者の皆様・ノーザンファームの関係者の皆様、脚元を常に気を遣って頂きながら、一生懸命に仕上げて頂いたこと、小島先生のブログ及びシルクの公式サイトで、コメント等を拝読させて頂き、理解しておりました。改めて、ありがとうございました。
秋華賞。馬柱を見て本馬が居ないこと。やはり寂しさを感じました。そして、レースをグリーンチャンネルで拝見して、ウィクトーリアが出走していたら、どんなレースをしてくれていたんだろうと、改めて思って見ていました。オークス3着馬・2着馬での決着。さらに、フローラステークス2着馬が4着。やはり、好勝負にはなっていたのかなと。。。3歳世代では、間違いなくトップクラスの1頭だったと思っています。
本馬のレースについては、デビュー戦~ローズステークスの全7戦、現地観戦応援させて頂きました。全てのレースが本当にいい想い出です。レコード勝ちをし口取りもさせて頂いた函館新馬戦、重賞勝利となったフローラステークス、夢を見させて頂いたオークス、秋華賞へ向けての秋初戦となったローズステークス。本当にワクワクさせて頂きました。母が勝った秋華賞の前に、引退となってしまったこと。何か深い縁を感じました。引退については、本当に残念ではありますが、繁殖牝馬として上がれたことは、本当に良かったと思います。ブラックエンブレムの牝系で、これだけ能力の高いお馬さんですので、いい仔を産んでくれると思います。産駒は当然応援したいですし、シルクで募集があればぜひ出資したいと思っています。小島先生のところに入厩してくれることを願っております。
今後とも、本ブログを拝読させて頂きたいと思いますし、応援させて頂きたいと思います。宜しくお願い致します。
調教師
2019年11月22日 19:18
ふくたけさん、カゼノコウテイさん、まささん、皆さんコメント有難うございました。いま思い出しても秋華賞な…と、ため息が出そうになりますが、毎週競馬が続いているお陰で、気持ちを仕事に向けられるのが救いです。最近は厩舎に飾ってあるフローラSの口取り写真を見て、またウィクトーリアのような馬と出会いたいなと考えが変わってきました。もちろんそれがウィクトーリアの仔だったら最高です。